コラム

「開発」とは何か?

「開発」と言っても、その内容は多岐にわたる。

2017-06-14掲載

 かつては開発部門に所属していた、ことになっている。実際に所属していた部署の名前は「生産技術開発推進本部」。名前を見ても立派な「開発」部門である。そこでやっていた仕事は、デバイスと基板の接合技術。当時は基板のコストが高いことが問題だった。コスト削減のためにより安価で、耐熱性の低い基板を使いたい。が、プロセス温度(製造処理の段階でさらされる最高温度)が高く、安い素材をそのままは使えない。そこをどうするか?、上司や同僚と知恵を絞った、つもりにはなっていた。

 今思い返してもテーマは非常に地昧であった。何か画期的なアイデアが出たわけでもない。しかし一応未解決の技術課題を設定し、解決できそうな手段を提示した。そこが解決できれば、コスト削減になる、とのストーリーは書いた。

 しかしそれでも、自分の仕事に自信は持てなかった。なぜならデバイスや基板やそれらの接合装置は、私が作ったものではない。そうすると、それらを使ってうまく接合させるプロセスを考える、というのは本当に「開発」なのだろうか、という気がしていた。

 一方でこんなこともよく考えていた。スティーブ・ジョブズはiPhoneを開発した、と多くの人は言っている。しかしスティーブ・ジョブズは技術者ではない。では彼は何を開発したのだろう? スマー卜フォンというコンセプトを新たに作ったのか? しかし実現したのは恐らくアップルの技術者達。この場合、開発したというのだろうか?

 当社には異業界出身の社員が多くいる。彼らとこの話をしてみた。つまり各々の業界で、「開発」というのはどの程度の内容であったか?と。飲食品などの業界だと、いわゆるマーケティング・マーチャンダイジングを「開発」と呼ぶこともあるらしい。また調査研究・コンサルティング業界だと新分野・新手法・新規業界から初受注できたら、新しい商品を「開発」できた、と言ってもらえていたようだった。

 彼らと話をしてみて少し安心した。正直自分の仕事が開発という名に値するような、これまでなかった新規なものを生み出す、という活動には到底なっていないように感じていたのだ。

 しかし他の業界の話を聞くと、同じ「開発」と言っても、その内容は多岐にわたる。そうすると私のやった仕事についても、あるいは「開発」だった、といっていいのかもしれない。少しそんな気がしてきた。
 かつて「開発」という言葉に負い目すら感じていたが、今後は少しだけ今までの開発に携わった実績をプラスに考えながら、今の仕事に活かしていこうと考えた。