コラム

統計データで年末年始を振り返る

2018-02-05掲載

 皆様は初詣にはいかれましたか?私は実家が千葉県ということもあり、毎年元旦に成田山新勝寺まで足を延ばしています。実家最寄りの鉄道が大晦日の終夜運転を実施していないため、元日の始発の電車に乗って成田まで向かっています。新勝寺の境内に到着する頃に、ちょうど初日の出を目にすることができるので、初詣に格好の時間帯だと思います。しかし、境内から参道まである程度混雑しているとはいえ、新年のカウントダウンで盛り上がった後にわざわざ早起きする人は少ないのか、テレビのニュースなどで見かけるような鮨詰め状態には程遠い様相です。真言宗智山派の大本山のひとつである新勝寺には毎年300万近い初詣の参拝客が訪れているとニュースなどではいわれていますが、文化庁が毎年まとめている「宗教年鑑」(*1)の平成28年版によると、真言宗智山派の信者数は全国で29万9890人。日本人が本当に無宗教なのかどうかはさておき、宗教や宗派に拘らない日本人はやはり数多いといえそうです。

 初詣を終えた後は、これもこれで毎年恒例なのですが、新勝寺の総門からほど近い駿河屋さんで鰻をいただきました。「ゆるキャラグランプリ2017」でグランプリを獲得した「うなりくん」が鰻と成田空港をモチーフにしているように、鰻は成田市の名物になっており、新勝寺に向かう参道沿いにも数多くの鰻屋が軒を連ねています。水産庁のまとめ(*2)にも表れているように、鰻の稚魚不足などから、駿河屋さんでもここ数年はじわじわと値上がりが続いていましたが、今年のお値段は昨年から据え置かれたままでした。毎年元日限りの楽しみとはいえ、お値段のこと、そして鰻という種の存続のことを考えると、そろそろ鰻を食べること自体を控えるべき時機が訪れているのかも知れません。

 後日、成田山新勝寺への初詣からの“鰻初め”が毎年恒例になっていることを、さいたま市の友人に話したところ、「鰻なら浦和も負けていない」ということで、気になっていくつか政府統計を確認してみました。業種別の店舗数を調べるのであれば、まずは「経済センサス」(*3)となりますが、最も細かい産業分類でも「日本料理店」までで、鰻屋の数を比較することはできなさそうです。一方で、地域別の消費量を測る物差しは、「家計調査」(*4)が代表格でしょう。宇都宮市と浜松市の餃子日本一争いの根拠もこれです。しかしながら、「家計調査」は文字通り家計を調査したものになりますので、一般的な家計簿において内食と外食が別立てになっているように、「うなぎのかば焼き」の購入頻度、支出金額はあくまでスーパーマーケットなどで購入した「内食」に限られます。「外食」を意味する「食事代」の中で、鰻が含まれるであろう分類は「和食」止まりで、やはり鰻屋の地域別データの比較としては無理がありそうです。そもそも、「家計調査」において都市別のデータが確認できるのは、県庁所在地もしくは政令指定都市に限られますので、成田市の実態を探ることには適しません。埼玉県と千葉県の不毛なライバル関係は今に始まったことではありませんが、とりあえず鰻屋については勝敗付かず、となりそうです。

 さて、初詣と鰻初めを終えた翌日には、実家から都内に戻りまして、正月営業中のビアバーまで足を延ばしました。昨今のクラフトビールブームを受けて、一昔前までのパブ、ベルギービールカフェ、ドイツ料理店に加えて、日本国内や米国の珍しいビールを中心に取り扱うビアバーが都内にも増えてきました。飲兵衛としては嬉しい限りですが、では、本当にクラフトビールの生産・販売量は増えているのでしょうか?

 先述した「家計調査」では「ビール」もしくは「発泡酒・ビール風アルコール飲料」にクラフトビールも含まれると考えられますが、よりクラフトビールに絞った統計データを探してみると、国税庁がまとめている「地ビール等製造業の概況」(*5)という調査結果が目に留まります。地ビール=クラフトビールと定義付けてしまうことには異論がありそうですが、酒税法上の分類である「ビール」「発泡酒」の総和よりはクラフトビール業界の実態に近しい数字と考えられます。「地ビール等製造業の概況」は毎年10月~12月頃に前年度の集計結果が発表されていますが、このコラムを執筆している2018年1月末時点の最新データである平成26年までの販売数量をまとめたものが図表1です。


 地ビールの販売数量が伸び続けていることが一目で見て取れますが、製造元の回答率が100%ではないアンケート調査であること、製造元が法人もしくは個人かで調査対象期間にズレがあることなどを踏まえると、地ビールおよびクラフトビール市場が伸長していることの証左というよりは、あくまで参考値と捉えるべきかも知れません。では、クラフトビール=大手5社(キリンビール、サッポロビール、サントリービール、アサヒビール、オリオンビール)以外のビールおよび発泡酒、と捉えた場合はどうでしょう。「国税庁統計年報」(*6)にはすべての酒類の課税状況がまとめられており、そのうちの「ビール」と「発泡酒」の課税数量を国内市場全体とした場合、そこからビール酒造組合などの発表している大手5社のビール(*7)および発泡酒(*8)の課税数量を引いたものが、大手5社以外によるビールおよび発泡酒の生産実績ということになります。ビール酒造組合からは2017年のデータがすでに発表されていますが、国税庁による統計データは2016年度が最新であることから、2012年度から2016年度までの5年間の実績をまとめると、図表2のようになります。

            図表2 大手5社以外のビール・発泡酒の生産量推移(kl)

 

2012年度

2013年度

2014年度

2015年度

2016年度

ビール

13,060

18,871

21,122

23,809

24,723

発泡酒

2,398

2,414

2,985

3,842

4,493

合計

15,458

21,285

24,107

27,651

29,216

                      「国税庁統計年報」「市場動向レポート」「発泡酒市場動向レポート」より作成

 やはり国内においてクラフトビール市場が伸びていることは間違いないといえそうです。もっとも、飲兵衛目線に立ち返ってしまえば、クラフトビールという冠にとらわれる必要性はまったくなく、大手5社の製品だろうと、地ビールだろうと、いろんな種類の美味しいビールが楽しめればそれでよいというのが本音になります。

 今回のコラムでご紹介した統計データは、いずれもインターネット上で無償公開されているものばかりです。社内外への提案資料を作成する際などには、その内容に説得性を持たせるためにエビデンスを定量データで求められることも間々あると思います。日頃から目の前で起きている事象や所感について、その裏付けを辿ってみる癖をつけておくと、いざビジネスの場面で必要となった際に役に立つかも知れません。

(*1) 文化庁「宗教年鑑 平成28年版」2017年2月28日
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/hakusho_nenjihokokusho/shukyo_nenkan/pdf/h28nenkan.pdf
(*2) 水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」2017年11月
http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/attach/pdf/unagi-43.pdf
(*3) 総務省統計局「平成26年経済センサス 基礎調査」
http://www.stat.go.jp/data/e-census/2014/
(*4) 総務省統計局「家計調査」
http://www.stat.go.jp/data/kakei/index.htm
(*5) 国税庁「地ビール等製造業の概況」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/seizogaikyo/10.htm
(*6) 国税庁「国税庁統計年報」
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_nenpo.htm
(*7) ビール酒造組合「市場動向レポート」
http://www.brewers.or.jp/data/doko-list.html
(*8) 発泡酒の税制を考える会「発泡酒市場動向レポート」
http://www.happoshu.com/mr-8po/list.html