コラム

複雑な分析もまずは地道な一歩から

将来の展望の精度を少しでも上げるためには、正確な現状把握が欠かせません。

2016-04-26掲載

 当社は調査研究の受託を生業としているので、直近の将来の展望をクライアント(顧客)から求められることは珍しくありません。そして、将来の展望の精度を少しでも上げるためには、正確な現状把握が欠かせません。

 かつて、インターネットのなかった時代には、情報を得てくること自体に経済価値がありました。最新の技術動向がまとめられた文献は今も昔も高額なものが多く、ある程度コストをおさえて最新の情報を収集しようとすると、わざわざ国立国会図書館や専門図書館まで足を運ばなければなりません。また、インターネットを通じてデータベースに気軽にアクセスできるようになったのはつい最近のことで、一昔前まではデータベースにつなぐための専用の端末が必要でした。ところが、今はインターネットに誰でもアクセスし、自由に情報を集めることができる時代です。情報を集めることで対価を得るためには、①一般には公開されていない、入手の難しい情報を提供できる ②入手にコストと手間のかかる情報を効率的に集めることができる ③集めた情報を編集加工、評価分析、解釈提言することで付加価値を加える、ということが必要になっています。

 正確な現状把握を行うためには日頃からの情報収集が欠かせません。ニュース番組や新聞報道を毎日確認することはもちろんです。顧客の近況であれば、顧客自身に聞くまでもなく自分の会社の顧客担当営業パーソンがもっとも精通しているでしょう。異業種・異業界の動向であれば、図書館で文献を読みあさるほかに、主要企業の投資家向け情報を確認する、そこに勤める友人知人にこっそり話を聞く、などといった方法もあるでしょう。とはいえ、ここまでインターネットが普及した現在では、まずは「当たりを付ける」ためにGoogleYahoo!で検索するという人が多数派ではないでしょうか。だとすれば、インターネットの検索エンジンを巧みに使いこなすことが、顧客やその業界の将来の展望を正確に描くための第一歩になるといってもいいかもしれません。

 では、インターネット検索を巧みに使いこなすコツとは何でしょうか。ひとつは検索エンジンのアルゴリズムを把握することです。たとえば、Googleの場合、ログインして検索したときにはその人の今までの検索行動履歴からその人の嗜好にあった情報が優先的に表示されることがあり、ログインせずに検索したときとでは、検索結果が表示される順番が異なってくることがままありますので、状況と目的に応じて双方を使い分けることが肝要です。また、当社の名前を例に出すと「日鉄」と「住金」と「総研」という単語の組み合わせではなく、「日鉄住金総研」という一続きの用語で検索する方法や、検索対象をPDFファイルに限定する方法なども、インターネット検索で目的の情報に到達するための精度と効率を飛躍的に向上させてくれます。検索のテクニックは多種多様であり、それらをまとめたWebサイトがいくつもありますが、むしろ日頃から繰り返し反復練習することで、勘所を押さえることができるようになります。

 一方で、情報の出典については必ず確認する必要があります。とくにインターネット上には、Wikipediaやまとめサイトなど、知りたい情報が項目別にまとめられているサイトがあり、ついつい飛び付いてしまいたくなります。しかし、出典が見当たらない内容を安易に信じることは禁物です。あくまで誰が書いたのかの責任の所在を明らかにして、正確な情報として取り扱うための手掛かりとしなければなりません。また、出典が明記されていたとしても、そこで手を止めてしまうのではなく、原典自体までたどってみて初めて情報の真偽や鮮度が明らかになることも少なくありません。

 もうひとつ重要なことは、情報源の類型化とそれぞれの特徴を把握することです。たとえば、「国勢調査」「経済センサス」などの官公庁統計であれば、全数調査と標本調査という手法の差異こそありますが、一般的に最も精度の高い情報源であるとされている一方で、調査の実施から結果の公表まで時間を要するため、そのデータが必ずしも現在を示しているわけではないことに留意する必要があります。業界団体統計、アナリストレポート、専門誌・専門新聞、有料・無料のデータベースなど、いずれの情報源もそれぞれに一長一短がありますので、そのことを理解した上で用いなければなりません。

 情報源の性質を知って扱うことは、調査研究全般に通じるイロハの一部であり、調査研究のプロフェッショナルとして対価をいただく大前提になります。プロフェッショナルだからこその付加価値、クライアント(顧客)がそれぞれに求める付加価値の中身については、守秘義務もありますので、ここで詳細を説明しないままにして伏せさせていただきますが、調査研究を生業にしている我々にご依頼いただく意義は、こうした調査研究のイロハの先にあること、と理解していただければ幸いです。(了)