コラム

働き方の変革期

「自分の強みを発揮すること」がより重要になってきているのかもしれません

2017-02-24掲載

 正社員の働き方が変わりつつあります。政府は「働き方改革」として、正社員の副業や兼業を後押しするため、厚生労働省が出す「モデル就業規則」から副業・兼業禁止規定を年度内にもなくし、副業・兼業を「原則禁止」から「原則容認」に転換する方針を発表しました(*1)。この方針転換を受け、現在働いている人、これから働く人が副業・兼業を行うのであれば、どのような視点が必要となるのでしょうか。経営学や会計学で言う「連結経営」の考え方を例にとり、考えてみましょう。

 まずは2015年に中小企業庁から公表された、日本における副業・兼業状況を示します(*2)。この調査は、日本の業種・所在地・規模を網羅するように選定した企業を対象としています。

図1: 副業・兼業の制度状況(n=1,173社)

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図2 :図1の容認企業で、実際に副業・兼業をしている従業員数 (n=173社)

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これら2つの図を見ますと、副業を容認している企業は全体の14.7%であり(図1)、容認企業のうち、実際に副業をしている従業員数で最も割合が高いのは1~5人の35.3%です(図2)。実際にはそれほど副業が浸透していないことが見て取れます。


次に、株式会社ビズリーチが2017年に公表した調査結果を見てみましょう(*3)。
こちらの調査では正社員として働く20代を対象としています。 

図3:Q.あなたは今、副業をしていますか?(n=341人)

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 図4:Q.今後、副業をしてみたいですか?(n=341人)

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これら2つの図を見ますと、現在副業をしている人の割合は8.9%と高くはないですが、今後の副業希望者は81.4%と、潜在的な副業者の割合は高いといえます。図1~4をまとめると、日本企業では副業を容認している企業は少ないものの、若い世代ではこれから副業をしたいと考える人が多く、政府の副業後押しの方針により、社員の視点から見れば今後副業者数は増加する可能性が高いと考えられます。


ここで、「連結経営」の幅広い論点の中でも「本業に密接に関わる副業を行うこと」について考えてみます。下記は2005年のベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』からの引用文です。
「新日鉄の子会社には、新日鉄ソリューションズという、特に金融機関や官公庁向けに強い大手システム会社がある。「鉄」と「システム」では一見なんの関係もないように見えるが、実は新日鉄には、鉄から発生した高度なIT技術があるのだ。鉄を作るためには、原料を高炉のなかで数千度という高温に溶かす。その管理は、まさか高炉のなかを覗くわけにもいかないからたいへんで、むかしは職人の勘でやっていたのだが、いまでは高度なシステムが代わりをしている。おまけに高炉は、一度火をつけると何年も24時間年中無休で動き続けるので、そのシステムの信頼性は非常に高くなければならない。この鉄で培われた技術は、もっとも信頼性が高くなければならない金融機関や官公庁のシステム管理と通じるところがある、というわけだ」 (*4)。この書籍では、新日鉄は本業である鉄鋼業で培われた高度なシステム技術を強みとして、ITサービス業という副業に活かしていると考えています。

この「連結経営」の考え方を個人が副業・兼業を行う場合に当てはめると、本人にとって相乗効果が高く、技術やスキルを活かすことが考えられます。営業職の方であれば、交渉術やプレゼンテーションスキルを、法務の方であれば、業務で培った法務知識を人に教えることで、副業とする道も考えられます。また、経理職の方であれば、会計知識を用いた資産運用アドバイザーも考えられるでしょう。
このように、働き方の変革期において、副業・兼業をするのであれば、自身の強みやスキルを確認すること、強みを発揮できる場を作ることが重要となるのかもしれません。了


 脚注

(*1)日本経済新聞2016年12月26日「正社員の副業後押し 政府指針、働き方改革で容認に転換」

(*2)(中小企業庁委託事業)平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書 2015年2月 株式会社リクルートキャリア

(*3)2017年1月11日株式会社ビズリーチ PRESS RELEASE 「キャリアトレック調べ」

(*4)さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問からはじめる会計学(山田真哉 光文社 2005年)