コラム

幸福な働き方

あなたはどのような働き方を選びますか?

2017-12-05掲載

唐突ですが、お金はあればあるほど幸福なのでしょうか?経済学でいうところの限界効用逓減の法則が収入にも当てはまり、一定以上の収入を得ても幸福感は上がらないとの統計があります(図表1)。

図表1世帯年収と幸福感(2011年度調査)

青山171205(出典:内閣府「人々の幸福感と所得について(中長期、マクロ的観点からの分析②)」2014年2月14日)

世帯年収で1,000~1,200万円未満までは、幸福感は増加していますが、次の1,200~1,400万円未満の層では、幸福感は減少しています。これにはいろいろな背景が推察されますが、仕事に専念し収入が増える代わりに、他の時間を犠牲にしているため幸福感が下がったとも見ることができるかと思います。どちらにせよ、大まかには1,000~1,200万までは幸福感は上昇しています。世帯年収が共働きの年収であると想定すると、一人当たりの年収で500~600万円までは幸福感が上昇することになります。

次に、今後主要な働き手となるミレニアル世代(2017年現在、10代後半~30代後半)(*1)のお金の価値観を見てみましょう。株式会社ジャパンネット銀行による「「ミレニアル世代」のマネー事情を調査(n=500)」(2017年6月15日)によりますと、10年後どれくらいの年収を稼いでいるかという質問に対する回答の平均値は429.8万円であり、700万円以上と回答した方は全体の14.8%でした。上記で想定した一人あたり年収500~600万円を稼げると考えているミレニアル世代は多くはないようです。

そもそもお金の面で充足する人もごく限られた存在になり、そのごく限られたお金持ちも自らを幸せと言い切れない状況は、よい社会の姿とは言えません。その中でお金を得るための働き方も、すべてをなげうって仕事に打ち込む「フルコミットメントタイプ」と、幸せを目指して仕事のアウトプット以外にも力を入れる「バランスタイプ」の、おおざっぱに2通りの取り組み方がありそうです。以下ではフルコミットメントタイプとしてアインシュタインを、バランスタイプとしてナッシュ(ハーバード・ビジネススクールシニアフェロー)とスティーブンソン(ハーバード・ビジネススクール教授)が提唱する幸福の測定基準をご紹介します。

特殊相対性理論及び一般相対性理論、相対性宇宙論など数多くの理論を提唱したアインシュタインですが、仕事にフルコミットし多くの成果を獲得するために彼の家族の生活が犠牲になっていた側面があります。結婚生活が上手くいかなくなった時、彼は妻に下記事項の契約書を提示しました(*2)。

Aあなたは以下のことに気を配る
① 私の服と洗濯物がすぐ使える状態に整えられていること
② 私が自分の部屋で、定期的に三度の食事を受け取ること
③ 私の寝室と書斎がきれいに整頓され、とくに机は、私以外が使用することを禁ずること
B社会的理由から必要となる場合をのぞき、あなたは私との個人的関係をいっさい放棄する。とくにあなたは以下の事項を放棄する
① 家で一緒に過ごすこと
② 一緒に外出、または旅行に行くこと
C私との関係において、あなたは以下の事項に従う
① 私にいっさいの親しい関係を期待してはならない。私にあらゆる非難をしてはならない
② 私が要求した場合、話しかけてはならない
③ 私が要求した場合、抗議をせずに、寝室および書斎から即刻立ち去ること
Dあなたは子供たちの前で、言葉や行いを通じて私を軽く扱わないことを約束する

アインシュタインの妻はこの契約に同意しましたが、当然結婚生活は破綻しました。数多くの偉業を成し遂げたアインシュタインですが、その背景には家族の負担があったと考えられます。

一方、ナッシュとスティーブンソンの調査では、幸福の測定基準として、次の4つが必須要素であることしています(*2)。

1幸福感 人生から喜びと満足感を得ていること
2達成感 何らかの業績でほかに抜きんでていること
3存在意義 身近な人びとに、ポジティブな影響を及ぼしていること
4育成 自分の価値観や業績によって、誰かの未来の成功を助けていること

上記は幸福に関する測定基準であり、働き方は主に要素2に関係します。これら4つの要素をバランスよく満たすことが重要であるという考え方です。

そして、バランスが良い状態というのは人によって違います。アインシュタインの例を考えますと4つの必須要素のうち2については文句なしに満たしていると考えられます。また、1については個人の感覚に基づくものなので外部から推測はできませんが、3、4については家族の幸福の犠牲のもとに成り立っていた面もあると考えられます。このように、個人の幸福を追求することが親しい関係にある人の幸福を充足しないこともあります。各人が自分にとってのバランスの良い状態、各要素をどれだけ満たせば充分なのか、また誰にとっての幸福を重視するかについて考えることが必要になります。

一生のうち働く年数が長くなるであろう今後の日本において、幸せの追求の仕方、その方法としての働き方、は重要なテーマです。上記の2つのタイプ以外にも多くの幸せに対する考えと、それに基づく働き方があると思います。

重要なことは、どのような働き方であれ、何に打ち込み何とバランスをとるのかを、自分で考え、選択し、行動し続けることにあると思います。

あなたはどのような働き方を選びますか?


(*1) アメリカで、2000年代の初頭に成年期を迎えた世代のことをいう。M世代、ミレニアルズMillennialsともよばれる(ミレニアルは「千年紀の」の意)。初めてのデジタルネイティブ世代であり、金融危機や格差の拡大、気候変動問題などが深刻化する厳しい社会情勢のなかで育ったことから、過去の世代とは異なる価値観や経済感覚、職業観などを有する(日本大百科全書より)。
(*2)飛鳥新社「残酷すぎる成功法則」(著)エリック・バーカー、(監訳)橘玲、(訳)竹中てる美