コラム

夏休みの工作から見えたもの

2018-08-28掲載

 今年は例年にない厳しい暑さの夏となったが、我が家の息子たちは、プールや釣り、虫取りなどをして、毎日元気に遊び、例年と変わらず夏休みを満喫していた。そして、夏休みも終わりに差し掛かると、夏休みの宿題に追われ、焦り出すその姿も、毎年見られる光景である。

 必死に宿題に取り組む息子の様子を横から眺めていると、一昔同様、国語や算数のドリルのほか、絵日記や読書感想文、そして科学工夫工作といった夏休み課題があるのが目に入る。このうち、「科学工夫工作」は、図工における工作とは違い、ゴムやバネなどの弾性力、風力や磁力といった動力を用いるか、或いは、光や温度などの性質を用いて、動きや変化のある作品を作る必要がある。この辺の条件や工作に使う材料も一昔前とそう変わらない。自身も小学生時代、苦労しながら、ゴムを動力とした船や、モーターを使った卓上扇風機(みたいなもの)を作ったことを懐かしく思い出す。
 
 毎年、同じような材料を使って何かを作る工作なので、作品も皆同じようなものだろうと思い、最近の作品を本やネットなどで探してみる。ところが、調べていくと、今もなお、毎年、様々な作品が生み出され、進化し続けていることに感心する。子供たちが苦労して作ったこうした作品も、子供たちの“創意工夫”の賜物であり、ある意味、“発明品”として見ることも出来る。子供たちが持つ自由な発想により、こうした新しい作品が次々と生み出されているのだろうか。その発想の源泉を探るため、子供たちが創り出す“発明品”の数やジャンルなど、何かしらのトレンドがあるのか気になり、少々調べてみたが、残念ながら正確なデータはないようである。

 一方、特許出願の世界には、きちんとしたデータがあり、これを基に発明のトレンドを簡易に分析することが出来る。例えば、特許庁からは「特許行政年次報告書」(*1)が毎年報告されており、その最新版が公表されたばかりなので、このデータを用いて、簡単に分析してみよう。国内出願データについて特許分類(*2)ごとにまとめられているので、ここからいくつかの特許分類をピックアップし、一例として出願件数のトレンドを表したのが、以下の表とグラフである。


1【表1】特許分類と出願件数の推移(抜粋)


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【図1】 2007年出願件数に対する各年の出願件数の比率(%)
※特許行政年次報告書2018年版(2018.7.30)分類別統計表 特許出願件数データより筆者作成。


 近年、国内出願全体の件数は減少傾向にあるが、一方で、年々出願件数が増加している分野として、例えば、「A24:たばこ;葉巻たばこ;紙巻たばこ;喫煙具」や「B64:航空機;飛行;宇宙工学」などがある。
 このうち、「A24(たばこ等)」分野は、2012年より出願件数が急増しており、2007年の出願件数:119件に対して、2016年の出願件数は279件と2倍以上となっている。この増加の要因となっているのが、「電子たばこ」に関する技術だ。また、「B64(航空機等)」分野は、2014年を境に出願件数が増加に転じ、2007年の出願件数:347件に対して、2016年の出願件数は662件と、大幅増となっている。この分野の増加を牽引しているのは、様々な用途に使われようとしている「ドローン」関連の技術である。

 一方で、出願が減少している分野として、「F02:燃焼機関;熱ガスまたは燃焼生成物を利用する機関設備」や「G02:光学」、そして、「G11:情報記憶」などが挙げられる。
 これらの分野の減少の要因としては、ガソリンエンジンなどの発明が含まれる「F02(燃焼機関等)」分野では電気モーターを用いる電気自動車、そして、カメラなどの発明が含まれる「G02(光学)」分野では撮影機能を搭載したスマートフォン、といった代替技術の台頭による影響が大きい。また、「G11(情報記憶)」分野では、2007年の出願件数が7327件であったのに対して、2016年では896件と12%程度まで激減している。この要因としては、情報記憶メディアの変遷や国内メーカーの衰退などが考えられる。

 それでは、鉄などの冶金の世界はどうであろうか。
 冶金を代表する特許分類「C22:冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理」を見てみると、2007年から毎年1800~2000件程度と、1割以内の増減率で推移し、比較的安定して出願が出されている。

 冒頭の夏休みの「科学工夫工作」は、「毎年、同じような材料で」と述べたが、冶金の分野も似たようなところがあり、限られた成分元素(材料)を基に、毎年新しい知見により、様々な発明が創出され、その結果が、出願件数を支えている。

 研究者の “創意工夫”と“日々の努力”により、鉄もまだまだ進化を続けている。

(*1)特許庁 「特許行政年次報告書」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/gyosenenji/index.html
(*2)特許文献に対して付与される技術内容に応じた分類で、IPC(国際特許分類)、FI、Fタームなどの種類がある。ここでは、IPC(国際特許分類)ベースで分類。

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