コラム

いまも昔も

キラキラネームは、現代の日本人の流行なのでしょうか?じつは、ある古典には、昔の日本人もキラキラネームを付けていたことが書かれています。

2017-01-04掲載

 スマートフォン向けアプリ「赤ちゃん名づけ」を提供するリクルーティングスタジオが、2015年上半期キラキラネームランキングを発表しました。3期連続で「苺愛」が1位に輝いたとのこと。名前の読みは「いちあ、かもえ、ねね、べりーあ、まいあ、めあ、めるあ、もあ、もえ、もな」とさまざま。2位から10位まではご覧のとおり。

2位「皇帝」(しいざあ、ふらんつ)
3位「黄熊」(ぷう)
4位「星凛」(きらり、あかり)
5位「唯愛」(いちか、ゆめ)
6位「永恋」(えれん)
7位「空蒼」(くう、あせい)
8位「志暖」(しのん)
9位「華琉甘」(かるあ)
10位「絆琉」(はる、ほたる)

ふりがなが付いていないと読めない名前ばかりです。
名前にキラキラネームをつけることをめぐっては賛否両論あります。こういうキラキラネームは、現代の日本人の流行なのでしょうか?

 じつは、ある古典には、昔の日本人もキラキラネームを付けていたことが書かれています。
その古典とは「徒然草(つれづれぐさ)」、鎌倉時代末期に吉田兼好によって書かれた随筆です。
「つれづれなるままに、日くらし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」
書き出しは学校で習った記憶があるけど、中身はぜんぜん知らないという方、多いのではないでしょうか?

 徒然草は、吉田兼好の独自の視点で時にはユーモアたっぷりに、時にはシニカルに、人生、仕事、恋愛、友情、政治、死生観など、さまざまな話題が取りあげられています。
徒然草を読むと、世相はいまも昔もあまり変わらないということに驚かされます。そして、人が生きていくうえで大事なこともいまと同じことがすでに昔にも述べられていて、なんだか力がぬけて安心します。人が生きている社会であり、人が行うことだから変わらなくて当然と言えば当然なのですが。
下手にビジネス書や実用書を漁るよりも、徒然草を1冊読むほうが得られるものが大きいのではないかと感じます。

 吉田兼好が徒然草でキラキラネームを取りあげている部分を紹介して本コラムを終わります。具体的にどういう名前がキラキラネームなのか知りたいところですが、兼好法師の筆は謎のまま終わっています。歴史探求は、みなさんで、ぜひ。


<徒然草・第116段>
「寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は少しも求めず、ただありのままに、やすく付けけるなり。この比(ごろ)は深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。人の名も、目なれぬ文字を付かんとする、益なき事なり。何事もめづらしき事をもとめ、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ。」
<現代語訳>
「寺院の名をはじめとして、その他あらゆる物に、名を付ける事において、昔の人は少しも凝ったりもせず、ただありのままに、わかりやすく付けたのである。けれども、この頃は深く考え、知性をみせびらかそうとしているように思われるが、これは非常に煩わしい。人の名も、見慣れない漢字を使って命名することは、無益なことだ。何事も珍しい事を求め探し、奇抜な説を好むのは、教養の無い人が必ずやる事である。」